駆動部品の検査を効率的に行うバランス測定機

自動車部品の検査では、回転させて振動を測定するバランス測定の項目があります。今まではバランス測定を行って振動が基準値以上であった場合、不合格品として廃棄していました。新しく開発した修正機能付きバランス測定機では、不合格品を極力減らすような措置を行い、自動でバランス測定と修正を行うことができます。この記事では、検査がより効率的になった成功事例として、当社のバランス測定機の開発についてご紹介します。

回転検査では振動を測定

駆動系などの回転部品は、製品検査の項目に回転検査があります。回転検査では、実際に回転部品を回転させて、振動を測定します。振動が規定値以上だった場合、その部品は不合格部品ということで、廃棄し再度作り直しを行う検査体制となっていました

回転部品は図面通りに製作を行ったとしても、わずかな部品重量の偏りなどによって、回転時の振動の発生状況が変わります。部材のわずかな比重の偏りなど、設計や製作の段階ではどのように対策を行っても、一定数は回転検査時に振動が発生してしまいます。こうした設計や製作の段階では、うまく製作ができているのか判別しづらいもので、完成した部品を回転検査にかけて初めてその結果がわかるというものです。これは「検査担当者泣かせ」ともいえる状況です。

検査した部品の半数以上が振動によって不合格となる場合もありますが、全く不合格品が出ない場合もあります。全ては検査を行ってみなければわからないという状況は、生産予測にも影響する由々しき事態です。

検査部品で振動が発生したら、自動でバランスを取る加工を行う

不合格品の予測ができない問題とは別に、回転検査での部品をセットして自動で検査を実施する機械の開発が進んでいました。回転検査では、振動を測定して各点での振動を基準値と照合して合否の判定を行います。

回転部品は、振動が高い場合、一部を削ることでバランスを調整して、再度回転させると振動が収まるということが知られています。回転時の振動を測定して、一点のみ振動許容値を逸脱した場合、その測定点付近に穴あけを行うことで、振動が発生していた部分の重量が軽くなるため、振動が抑えられることが多いようです。

この原理を利用して、回転部品の回転検査を自動で行って、振動値の逸脱があった場合、該当部分の穴あけを行って再度回転検査を実施するという検査機械の開発を行いました。高度な技術を必要とするため、工作機械メーカーとの共同開発により、検査用機械を開発しました。

バランスを取るために穴あけを自動で4回まで行う

回転検査の振動は発生が予測することは難しいのですが「振動発生時にどれだけバランスを取ったら振動が収まるか」ということも予測することが困難といえます。そのため、回転検査で振動が収まらなかった場合、バランスを取るために穴あけをたくさん行ってしまうと、機械的な強度が弱くなってしまいます。

回転検査で振動が発生してバランスを取る回数にも上限を設ける必要があります。開発を行った検査用機械では、バランスを取る穴あけを4回まで行うことで上限を設けております。バランスを取るために4回穴あけを行っても振動が収まらない部品は、初めて検査不合格となります。

今までの検査であれば、回転検査で振動が発生してしまうと即不合格となっていましたが、バランスを取ることで4回まで穴あけを行い、不合格品を削減し、製作時のロスを減らすことにもつながりました。

まとめ|日々の業務の観察から思わぬ効率化を生み出す

検査時の不合格品を減らすことで、製造ロスを減らすことにもなりますが、設計や製造の段階でも回転部品の不合格の可能性の予測は難しいといえます。そんな予測の難しい回転検査だからこそ、不合格の振動が出た場合、微調整を行って再度検査にかける手法で、不合格品の削減にアプローチしました。

不合格品を出さないように設計、製作を行っても確率的に不合格品が出てしまいます。この不合格品を減らす方法は一つではなく、さまざまな方法があるということができます。特に一度振動が出たら不合格で廃棄を行うのと、バランス調整を4回まで実施してから不合格とするのとでは、検査の通過率が大きく向上し、工場の生産効率も格段に上昇します。日々の業務の観察から、思わぬ業務の効率化が見えてくることがわかります。